お知らせ

ホームページ開設のお知らせ

令和5年8月10日、「政治経済史学」HPを開設いたしました。広くご活用ください。

  • 『政治経済史学』661号収載、会長・野村乙二朗の巻頭言を掲載いたします。

最終戦争時代論 ―「正義」より「理解」を―

政治経済史学会長 野村 乙二朗


 人類は今、有史以来未曾有の危機に遭遇しています。
 2023年現在、危機は三方向から迫っています。第一は言うまでもなく核戦争による軍事的脅威です。第二は、資本主義による経済的破綻です。第三は地球温暖化という気象条件悪化による生命の危険です。その三者は有機的に結びついて人類に破滅的な構造的危機を作り出しています。

 第一の核戦争の危機について  
 第二次大戦後、核兵器を大量に保有する軍事大国同士(アメリカとロシア)の直接の戦争はおこっていません。しかし現在進行中のウクライナ戦争のように、核兵器を保有する軍事大国と核兵器を保有しない軍事小国との戦争は何回か起こっています。その際、アメリカによる朝鮮戦争やベトナム戦争も、またソ連によるアフガニスタン戦争も、いずれも長期化し、しかも軍事大国が軍事小国に勝利していません。現在進行中のウクライナ戦争も、ロシアがウクライナに勝利する見通しはありません。
 現在のウクライナ戦争で顕著なのはアメリカとその同盟国によるウクライナ支援規模の盛大さです。従来もアメリカやロシアのような軍事大国が軍事小国に勝てなかったのは、今一つの軍事大国が相手側の軍事小国を支援していたからですが、今回のウクライナ戦争ではアメリカ及び同盟諸国の援助は、通常兵器に関する限りロシアの軍事力を上回る規模に至っていると考えられます。
 もちろん今回の支援でも、ロシア側を過度に刺激してはならないという抑制が一応は働いているように思われます。しかし今日見られるほどに露骨な支援が行われるに至ったのは、ロシア側が核兵器を使用出来る可能性はほとんどなくなっているという楽観があるからでしょう。確かに一般的に核兵器は積極的な使用が極めて困難な兵器として、もっぱらその抑止力に期待が持たれているようです。
 しかし、それは通常兵力ではロシアがむしろ劣勢ともいえる状況の中では決して安心できる状況とはいえません。戦争は狂気を日常化します。そういう視点で考えると、今日の状況は「火薬庫の前での火遊びに等しい危険な状況」と言えるのです。

 第二の資本主義について
 ソ連が崩壊して以来、社会主義はほとんど魅力を失っています。しかし、そのことは資本主義の正当性を意味するものではありません。資本主義の矛盾は。産業廃棄物の増大で、国家間、民族間、階層間の矛盾としては拡大しています。何より資本主義の弊害を放置できない弊害として告発しているのが次の気候変動です。

 第三の気象条件の悪化について
 「百年に一度」といわれる風水害が毎年のように起こっています。この「気候変動」を作り出しているのが「裕福な生活様式の過剰消費」であるとは早くから指摘されていることです。
 この状況を脱却するには、現代が核兵器やICBMが大量に存在する「最終戦争時代」であることを深刻に認識し、お互いがいたずらに自らの「正義」を主張するよりもむしろ相手の立場を理解し、和解することが何より必要だということです。
 「正義」は通常、歴史的因果に求められます。その歴史的因果論には、原因と見なされる「起点」があり、その「起点(原因)」をどこに置くかによって「正義」の所在が決まります。有史以来の危機的時代である「最終戦争時代」は、いずれの時点も「起点」となり得るという意味で、自らが設定した「起点(原因)」に固執して「正義」を主張することは有害です。最終戦争時代」には「正義」より「理解」をというのは、人類にはそれ以外の選択肢がないことを意味しているのです。

  • HPスタートとして試行的に、「会員専用」リンク箇所に会誌『政治経済史学』のバックナンバー660号を掲載いたしました。今後このように順次バックナンバーを掲載していく予定です。
  • 2024(令和6)年1月1日からは、こちらの「会員専用」リンク箇所は会員のみ閲覧可能となりますので、会誌とあわせて閲覧をご希望される方は、是非、会員登録をお願いいたします。
  • なお、過去の660号までに論文を掲載された著者の方で、今後、ホームページのバックナンバー掲載をご希望されない方は、問い合わせフォームより会にご連絡ください。
  • お詫び
    『政治経済史学』661号の発行、ホームページ掲載につきまして、今月8月末頃となる予定です。
    当初の予定より遅れまして、誠に申し訳ございません。暫く、お待ち頂きたく存じます。